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ててんててん、ててんててん





 おい、何だ↓の赤い物体。
あまりに・・・・あんまりだろう。
もっとこう・・・・あるでしょうよ。
これはアレよ。
せいぜい赤いゴブリンよ。

 とりあえず律正編をちゃっちゃと終わらしたかったんで投下しときます。
こっからすっごい戦闘ばっかで、書いてる本人も訳わかんなくなっちゃうくらいだけど。



 桂木はすでに叫ぶのをやめていた。
僕はそれ以上彼に話しかけることができずに、彼もまた話すことなく寝そべっている。
 そんな僕らの耳に、荒れ狂う怒号がかすかに届いた。
「・・・・お前の言った通りか」
力なく横たわっていた桂木が上半身を起こしていた。
「恋が守った場所、ね」
その状態で彼は自分の右手のひらを見つめていた。
「ったく、世話のやける女だ」
そう呟いて拳を握りしめ、立ち上がる。
「仕方ねえから背負ってやるよ」
 桂木はそう宣言して歩き去る。
もう迷いなどないと、そう言うかのように揺るぎない足取りで。
 その後ろ姿を僕は見届け、力なく地面につっぷした。

 彼には一つだけ言っていないことがあった。
僕は
 『彼女は自分の能力で君の放った弾丸を止めることはできなかった。
そんな余力はなかった。』
と言った。
 だがこれには少しだけ間違いがある。
実際に彼女はそれ以上能力が使えず、自分の身で弾丸を止めるしかなかったことは確かだ。
だけどそれは彼の能力を調整したことだけが原因ではない。

 あの時の彼女の亡骸を検死したのはバベルタワー直下の医療班だった。
彼らは知らせを聞き、すぐさま彼女の骸を預かった。
その間、死体は触れられておらず、傍にいたのは放心した桂木 修司一人だけだったという。
 彼女の能力はバベルタワーも軽視してはいなかった。
はっきりと測定はしていないものの、彼女の能力はクラス9とほぼ同列と見なされていた。
そしてその能力自体、研究されるべきものとして見られていた。
だからその死体、主に能力、はタワーに到着後、すぐさま調べられた。
 本来ホルダーの能力というのは、産まれ持って得たものだけあって、体に何らかの痕跡があるらしい。
それは死んでからも同じことで、能力が体を駆け巡るのに必要な情報を、その死体は持っているんだとか。
流石に時間がたってからでは分からないが、今まで死んでしまった有能な能力者のデータはそうやって保存されてきた。
 しかし、だ。
『サイキック』榊 恋の能力を調べようとした医療班は困惑した。
本来ホルダーが持っているであろうちょっとした変化、不審点。
それらが一切見当たらなかったのだ。
その体は無能者と何ら変わらなかったのだ。
 もちろん、能力が人体に顕著に表れない例もないことはなかった。
けれどそれらはほとんどあってないような能力ばかりだった。
彼女のような強力な能力にはありえない自体だった。
 原因は不明。
能力の正体も不明。
ファイルにはそう記されるしかなかった。
 だが彼女はその数時間前に桂木 修司の能力の調整を施している。
はたして調整とは本当に『彼の能力を正しただけ』だったのだろうか。

 ***

 律正学園正門。
この学園はこれだけの大きさを誇っているにも関わらず、門の数は北と南の2門しかない。
それぞれ北が裏門、南が正門といった具合にだ。
 その正門には今、2人の男が立っていた。
「おいおい・・・・マジに来るとはな・・・・」
「ねぇ何で僕来たの?何で来たの!?」
「っせえな、いいから備えろよ」
 片方は木本 達也。
もう一方は金谷 カズタカ。
「備えるって何にさ!?」
「戦闘準備に決まってんだろっ!」
 その二人を値踏みするように、正門から一定距離離れた位置に数十の人がいた。
「おめぇらココの生徒じゃあねぇよなぁ?」
「つーかその制服『春が丘』、中学生じゃないですか!ギャハ、ギャハハ」
そいつらは馬鹿にするように下品に笑った。
「僕たちそこ、どいてくれないかなぁ?」
それらの一人がそう言った。
 二人が立つ場所は正門の真ん前。
見方によっては来る者を阻んでいるように見える。
「どく?俺が、ここを?」
 その言葉に挑発で返す男。
「はい!はい!今すぐにでもっ!」
 その言葉に従順に従おうとする男。
そんな二人の姿は、ある意味、そこにいる数十人を馬鹿にしているようにも見えた。
否、実際にそいつらはそう感じた。
「てめえら・・・・ガキが粋がってんじゃねえぞ」
「だったらそのガキどかしてみろよ」
 再度、挑発で返す男。
「いえいえ、めっそうもない!」
 再度、下僕のような姿勢を見せる男。
その再度再度は、それだけの人数を動かすのに十分なほどの煽りであった。
「「「くそガキどもがぁああああああ!」」」
「はっ!やってやるよ」
「ぎゃあああああ!」
 2対数十の衝突。
それらの雄叫びは一瞬で学園中に響き渡った。

 ***

 律正学園。
そこはアウターヘブン随一の規模を持つ学校である。
 その校舎は主に内と外を分けることを重きに置いたつくりになっている。
それは上から見ればよく分かる。
四方をほぼ壁で覆い尽くされ、空いているのは上下の門のみ。
中からは地面の高さ上、外の街並みを見ることは可能なものの、外からではほとんど中の様子は窺えない。
 その中で起こった「音」すらも、外壁に阻まれ外に漏れることはそうそうない。
そして今回の騒動も、ちょっとやそっとのことでは周囲に知れることもない。
 学園内外の人為的な遮断。
言ってみればここは生徒らの牢獄だ。
それゆえの強度。
それゆえの不変。
それゆえの中央である。
「さ、て・・・・ネズミを飼うのも退屈です・・・・やはりこうでなくてはなりません」

 ***

 散らばるのはごろつきが持ち寄った鉄パイプやら、バールやら、いくつかの凶器。
そしてその持ち主ら。
 立っているのはボロボロの男と、余裕の笑みを浮かべた人々。
「へぇ、これは凄い、そう思いますよ」
 その中の一人がパチパチパチと賞賛し、手を叩く。
「はぁ、はぁ・・・・次はお前か、かかってこいよ」
ボロボロの男はその状態で、挑発を繰り返す。
 その態度に手を叩いた男は不満そうに口を尖らせる。
「私は褒めているのです。素直に受け取ってもらえるとありがたいのですが」
「けっ、敵に褒められてよろこぶ馬鹿がいるかよ」
男は重たい鎧を着て、手には何も持たず、ただ立ちふさがる。
 カチャリと音を立て、丁寧な姿勢を崩さない男は自らの武装と取りだす。
それは細く、まっすぐに伸びた日本刀だった。
「私はいざこざが嫌いでしてね。今からでもそこを退いてくれるのなら、救急車位は呼んであげますよ」
「あいにく病院は嫌いでね」
「そうですか、気が合いますね」
 鎧男は拳を握る。
日本刀男は切っ先を下に下げ、腰の位置で刀を握る。
「「はあっ!」」

 地面すれすれまで下げた切っ先を、大きくななめ上へと持ち上げる。
その際に起きた剣撃は、空気に伝わり、その力に合わせて風は進行方向に吹く。
鋭く、細く、刃となって標的に吹き、切りつける。
「<地走り>」
 刀身が届く位置までが剣士の攻撃範囲。
その範囲を逸脱した『地を這う斬撃』。
「私の通り名です。鎧諸共スライスして差し上げましょう」
「ぬあっ!」
 腕を交差させ、襲い来る斬撃を受け止めた鎧男。
だが受けとめたそのガントレットはパックリと割け、男の腕には一筋の血痕が浮かびあがっていた。
「なるほど、意外と堅いのですね、その鎧。腕を切り落とすことすらできないとは、嘆かわしい」
「てめぇはてめぇで近接型かと思いきや、思いっきり遠隔専門の剣士じゃねーか。全く憎たらしい」
「剣士?いえいえ、私はただの─」
 剣道を嗜む者にとって、敵との間合いを詰めることなどお手の物。
ほとんど何の予備動作無しに鎧男との距離を「射程内」まで詰める刀男。
「─ごろつきですよ」
 既に下げられた切っ先。
空気を斬撃に変えられるほどの圧を放つ振りかぶり。
その切っ先が再度、大きく上へと上げられた。
今度はその軌道に鎧男を含む形で。
 避けることなど不可能。
さっきのような引っかき傷などではない。
鎧はその意味を成さず、肉体からは鮮血が迸る。

 ああ、くそ。
血ぃ、出過ぎた。
たってらんねぇぜもう。
これで終わりかよ。
ったく、まだ来ねえのか、高っちょ・・・・。

 ガクンと、糸が切れた人形のように、木本の体から力が抜ける。
そのまま片膝を着いて前に倒れこんだ。
 刀男は、穢れ物を振り払うかのように、日本刀を振った。
払い切り、ふっ、と正門の向こう、学園の中庭の方へと視線を向けた。
無意識に体が震えた。

 そこには男が一人立っていた。
その男は片腕を地面と水平に上げ、若干半身をこちらに向けるようにして立っていた。
だが、その男を見た瞬間、刀男の体にゾワリとした嫌な寒気が走った。
「ふ、ふふ、ふふふふ」
 口から洩れるのは乾いた笑い声。
目は絶望に揺れていた。
「他人の敷地で暴れてんじゃねぇよ」
 正門から中庭までの距離は短くない。
けれど、そこに立つ男の声は何故か確かに聞き取れた。
聞き取れてしまった。
「お引き取り、願おうか!<ロングバレット>!」
「<地走─>」
 刀男の一瞬ふわりと体が浮き上がり、次の瞬間、後方に吹き飛んでなすすべなく地面に落ちた。
そこに立っていたせいで、手前にいた他のごろつき共には見えなかったのか。
壁となっていた刀男が倒れた後、その向こうにいた人物を目にした者どもは、一斉に驚き、恐怖し、声を漏らした。
「ト、『トリガー・・・・ハッピー』ぃ!」

 ***

 疲れた。
もともと僕は肉体労働ってのが大嫌いなんだ。
そりゃ近頃は不本意ながら暴れちゃってはいるものの・・・・。
基本的に僕はインドア派だ。
木本には「助けに来いよ?」なんて言われてたけど、今の僕はもう動きたくありません。
 ゴロン、と体制を変え、地面に横たわったままで視線を変える。
それにしても良く働いた。
バベルタワーに赴いてファイルを漁り、木本にも手伝ってもらって過去を盗み見た。
やったことは褒められることではないけれど、なかなか暗躍したんでなかろうか。
 そう思いながらぼーっと視線を巡らせた先に校門があった。
 一瞬思考が停止した。
さきほど桂木が向かったのは正門だ。
そのはずだ。
では今目の前にあるこの門は何であろう?
 裏、門?
確か律正にそんなものがあったような気がしないでもない。
けれど何でその裏門がきれいに開け放たれているのだろうか?
まるで来訪者を歓迎するかのように。
 いや、そもそも何故同じ入口であるのにこちらは攻撃をうけてないのだろうか。
さっき聞こえた怒号は正門の方からだった。
だけど入口がこちらにもあるのだから、こっちも攻撃を受けていないとおかしい。
それぞれ正反対に位置するのだから、一斉に攻撃をしかければ戦力は分散される。
元々桂木一人しか戦力がなかった律正であれば、簡単に陥落させることが可能な作戦ではないのか。

「「「ひゃっはああああああ!」」」

 突如、その思考はまたも停止させられる。
裏門の向こう、確実にこちらに向かってくると思われる団体が奇声を上げた。
 律正に対する、北と南に門があるが故になされる、別勢力からの挟み撃ち。
そして今、北からの攻撃に対応しえるのはここにいる僕のみ。
「・・・・絶望的じゃないですか」

 ***

 何もできないままにその団体は裏門に到着し、最初の一人がその門内へと足を踏み入れた。
髪に剃りこみを入れた金髪男が中をキョロキョロと見渡し、横たわる僕を発見する。
ニタァ、と獲物を見つけ、喜ぶように顔を歪めた。
その男が胴体とともに校内に持ち込んだのは、これまた分かりやすいほどの凶器、釘バットであった。

 ***

 圧巻、とはまさにこの通り。
さきほどまでそこらでゾロゾロ蠢いていたチンピラは、皆一様に逃げ惑い、駆逐されていく。
「レベルが違いすぎんぜ・・・・」
 力なく、それでも気を失うことなく木本は倒れている。
すでにその四肢は自らの意思で動かすことはままならない。
血が足らず、そして何より酷使しすぎていた。
 そんなことより、木本が今自分の身より、気になっているのは高っちょの身であった。
傍にいても邪魔なだけだったので、支援という名目でカズタカを向かわせたのだが、無事であろうか。
 聞いていた情報では、総攻撃はこの正門にいる「ちゃち」な数の話ではない。
それこそ全方位からこの律正が攻められてもおかしくはないのだ。
 聞けば北と南に2門あるという。
であるならば、これ以上の数がもう一方の門に集結していると言うことになる。
 この正門を自分一人で抑えられたらどれだけよかったか。
そうすれば残りの勢力は、今ここで暴れている『トリガーハッピー』も、大群が来ているであろう北門に当たれたのだ。
 最近そんなことばかりだ。
俺は弱い。
どうしようもなく弱い。
なんでだ。
この鎧は何のための鎧だ。
「くそ、くそっ!」

 ***

 ずるずる、ずるずると。
持ち上げるのすら億劫だと言わんばかりにバットを引きずる。
「一人目ぇ・・・・」 
その男は立ち止まり、高原を見下ろした。
「あひゃ、ひゃひゃひゃひゃ、ぶち殺─」
 その男の視線が瞬時にぶれた。
否、横から襲ってきた何かに突き飛ばされた。
男が飛ばされた方向を見れば、今まさに振り下ろさんとしていた、バットが道中に落とされている。
そしてその男自身は、圧倒的な力を持ってして、壁に押し付けられていた。
巨体を震わせ、人一人当たり飛ばすほどの勢いで突っ込んできた物体に、壁に挟まれるようにして潰されていた。
もちろんすでに意識はない。
その巨体がむっくと体制を立て直せば、ずるずると壁をつたうようにしてつっぷしてしまった。
「ま、さか・・・・」
 高原がその巨体に話しかける。
「大丈夫?高っちょ」
その巨体が答える。
「・・・・お前」
「助けに来た、後は僕がやる」
巨体は、ぞろぞろと這い出るようにして門をくぐる、侵入者達を見据える。
 それは宣告だった。
「僕はね、争いごとが大っ嫌いなんだ」
一歩ずつそいつらをにらみながら門へと近づいていく。
「でもね、いくら僕でも横たわって動かない人をいたぶるヤツらに、怒りを感じないわけじゃないんだよ」
一歩足を出すごとに、その拳を強く強く握りしめる。
「ましてや横たわっているのが僕の友達なら、なおさらだ」
もう一歩、もう一層強く。
「もう一度言う。僕は今怒っている。お前らは絶対に許さない!」
 巨体の名は金谷 カズタカ。
”熱意の応酬”通称『ファイト』のホルダーにしてクラス2。
現時点を以って、律正学園防衛戦に参戦する。

 ***

「残り、20とちょっとか」
 ひたすらに打ち続け、ひたすらに排除し続けてもまだ残る。
一体『トリガーハッピー』だけにどれだけ警戒しているのか、それが一目で分かるようだった。
「つっても、まだまだ全然足りないけどな」
 それでも届かない。
これだけの人数を集め、一つの門に集結させたとしてもまだ届かない。
無能力者、または低クラスが集まったところで、このクラス5にはたどり着かないのだ。
「まぁ、いいか。どれだけ自分らが愚かだったか、存分に刻んでやる」
 鬼ごっこは続けられる。
いたぶる様に、舐る様に、続行される。

「おい、聞こえねえのかよ」

「何だ、おとなしく転がってろよ鎧」
 倒れて動かない鎧が声を発した。
声を上げた今も、倒れていることに変わりはない。
「聞こえねえのか、と聞いたんだ」
「だから何が」
「雄叫びだよ」
 雄叫び、だと?
そんなものは数分前に聞いた。
だからここに来た。
「聞いたからこっちに来たんだろうが」
「ちげーよ」
 だが帰ってくるのは否定、いや非難。
「馬鹿、こっちはフェイクだ」
「フェイク、だと?」
 「律正は総攻撃にあいます」そういっていたヤツの顔が浮かんだ。
その総攻撃が今この場にいるたかだか『数十』の面子だけなのだろうか。
「まさか・・・・」
 思わず校舎側を振りかえる。
さっきまでいた、あの少年と戦った場所が、今別の攻撃にあっていると言うのか。
「さっさと戻れ」
 鎧が言った。
「・・・・戻ったところでココが突破されたんじゃ仕方がない」
「だから俺がいるんだろう」
「何を言うかと思えば・・・・その怪我、もう戦えないだろう」
 現に今も鎧は立ち上がってはいない。

「・・・・やってやるさ」
その鎧が指を動かした。
「俺は、ずっとずっと強かった」
その鎧が手を動かした。
「だけど、あの学校に入って、自分より強い奴に出会った」
その鎧が足を動かした。
「驚いたさ。俺は強かった、最強だった。それがたった13年で潰えたんだからな」
その鎧が肩を動かした。
「俺はそいつに勝たなきゃいけねえ」
その鎧が胴を動かした。
「もっかいやって、勝たなきゃいけねえんだ」
その鎧が腰を動かした。
「こんな所で、こんな雑魚に負けるわけがねえんだよ!」
その鎧が立ち上がった。
 『トリガーハッピー』は思考する。
そして決断する。
「死んでも守れよ」
「上等じゃねーか。守ってやるよ」
鎧は拳を突き合わせる。
 鎧の名は木本 達也。
”鋼の外装”通称『プロテクト』のホルダーにしてクラス3。
現時点を以って、律正学園防衛戦に再戦する。

 ***

 金谷 カズタカ。
僕はあいつがどれほど戦えるのか知らない。
あいつも僕と同じで戦いは嫌いだし、あいつが能力を使って戦っているところは一度しか見たことがない。
あの裏路地でカインに突撃し、僕を救出した時だ。
 その場面のみを見た限りでは、彼が決して戦えないわけではないことが分かる。
それにあいつの能力は『ファイト』だ。
戦闘向けである。
 不安がないと言えば嘘になる。
心配じゃないと言えば詭弁になる。
 だけどあいつが来てくれて安心したのは本当だ。
別にあのシーンを守ってくれたからじゃない。
戦えない僕の代わりに守ってくれるからじゃない。
あいつが、カズタカだから安心したのだ。
 あいつは戦えないわけじゃない。
見せてやれよ、見せてくれよ。
「きっちり守ってくれよ、カズタカ!」
「かっちり任された!」

 それまでの歩みを止め、一気に駆ける。
二歩、三歩、そして四歩目。
「<カノン>!」
 踏み出した足を中心に、ぶわっと砂が舞う。
ぐぐっとかかとを上げ、もう一歩の足が空を蹴る。
その勢いは、まっすぐに敵の集団へと向かっていた。
さっきの、男を押しつぶした、速度で敵の中心へと殴りこむ。
「なんだ、こいつっ!」
 そのど真ん中で急止し、門から団体までの一直線に立っていた者が飛ばされる。
「て、めぇえ!」
すぐさま敵意が向けられ、数人が手にした武器を真ん中に立つカズタカへと振り下ろす。
「<クラッシュ>」
 だがそれらは、急に姿勢を低く、身をかがめたカズタカにかわされる。
そのまま、武器を振りおろし、がら空きとなった、一人の胴体へとその巨躯は打ち出される。
「ぐ、お・・・・」
ぶち込まれた大型の物体に耐え切れず、男が一人宙を舞う。
 カズタカも一緒に浮き上がり、その途中でくるりと方向転換する。
「<カノン>」
空宙に浮いたその状態から、一緒に飛んだ男の腹を地面にし、再度地上の集団へと体を打ち出す。
「なん、だとぉおお!」
地面に着地、その過程で二人を下敷きにする。
 地面に降りたカズタカの姿勢は低いまま、その状態で目だけを周囲に向ける。
その視線が一人の男を捉えた。
「ひ、ひっ!」
怯えた、ひるんでしまった、男の体へと、その体躯は猛進する。

 ***

 正門。
その門を守る男が2人。
「おい、俺に任せるんじゃなかったのかよ」
「はっ何を聞いてた。手伝わせてやるから死ぬんじゃねえってことだ、よ!」
 諦めず向かってきた男の足が払われる。
「んだよ、カッコつけさせろよ」
「悪いね、手柄を渡す気はない」
 はぁ、と片方がため息をつく。
「だったらちゃっちゃと片づけて」
お互いが同時に視線を交差させる。
そして同時に言葉が出た。
「「さっさと助けに行くとするか!」」

 ***

「なんだぁ・・・・こりゃ」
 カズタカに任せて休んでいると、木本と桂木がやってきた。
どうやら正門は片付いたようで、こっちに助けに来てくれたらしい。
でも見てほしい。
助けてやって欲しいのは相手さんのほうだ。
「あのデブあんなに戦えたのかよ」
「僕もびっくりだよ」
 あまりの出来ごとに、木本も驚いている。
加勢に来たと思うのだが、すでに鎧を脱いで隙だらけなほどに。
「なんにせよ、これで『俺らの』勝ちだ」
桂木がすたすたと乱戦の方へと向かっていく。
「ト、『トリガーハッピー』だ・・・・まだいたってのかよ・・・・」
「どうすんだよ俺ら・・・・」
などと、桂木の姿をみたやつらはざわめく。
恐れられすぎだろ。

「カハハハハハ!」

 どよめく乱闘の中、ひときわ大きな笑い声が響き渡った。
と、同時にズシンとでっかいクマみたいな大男が姿を現す。
敵の集団の中から。
「そのナリどこに隠してたんだよ・・・・」
と呟いた僕の心境を汲んでほしい。
「そこの坊主に『トリガーハッピー』か!」
 毎回語尾に感嘆符がつくほどの声のでかさだ。
「ワシらの負けだなこりゃ!カハハハハハ!」
何が面白いのか、そのクマ男は笑っている。
「でっか・・・・」
 乱闘のど真ん中にいたカズタカなどは、見上げないと頭が見えないようだった。
というかそいつの存在に今気付いたのか・・・・。
「時に聞きたいんだが、おまえら正門の方から来たな!」
 もう勢いが強すぎて、疑問形なのかすらわからない。
どうやらその問い(?)は木本と桂木に向けられているようだった。
「・・・・まぁ、な」
 しぶしぶながら木本が答える。
あんなクマ男に今の呟きが届くのだろうか。
「そっちには愛染がいたはずだが・・・・あれを突破したのか!」
どうやら耳は悪くないようだ。
いや、別に聞いてなくてもできる質問か。
「愛染?」
「刀もった変な野郎だ!」
「ああ・・・・っち」
 何やら木本はその愛染とやらにいい思いがしないらしい。
露骨に顔を歪めた。
苦戦したのだろうか。
「あの阿呆なら俺が撃ったな」
代わりに桂木が答えた。
「カハハハハ!あいつを阿呆呼ばわりとは、ますますもってかないそうにない!」
 だから何がそんなに面白おかしいんだよ・・・・。
頭のネジが緩んでるのか?
「惨敗だ、惨敗!ワシらは撤退するとしよう!」
 強引に負けを認め、強引に引こうとし始めた。
いや、待て待て待て待て。
「おい、こんなに騒いで「負けました」で終わらせるつもりか?」
 当然のことながら桂木が攻め立てる。
僕もその意見に200%完全一致に同意する。
「ちっと、ふざけ過ぎじゃねえのか?」
「『トリガーハッピー』・・・・『サイアク』殺し、か」
 ポツリが呟き声がした。
「・・・・小僧、おまえがこの学園に入れられた訳を分かっているか?」
クマ男はさっきまでの大仰すぎる態度と声を止め、静かに、諭すように桂木に語りかけた。
「訳・・・・だと?」
「なぜ数多ある学び舎の中でこの律正に入れられたのか、それを理解しているのか?」
「てめぇは知っているとでも言うのかよ・・・・」
「興味あるか?」
ニィンと、ぶきみな笑みを浮かべた。

 ***

 場所は移って冠山ふもとにある廃屋。
冠山とは、雲が山頂を常に覆うようにかかっており、それがまるで王冠のように見えることからそう呼ばれる。
律正の北門を0時の位置とすると、大体2時の方向に数キロ行った付近にある。
どうやらその廃屋は、クマ男が仕切るグループの溜まり場のようだった。
「・・・・えっと、めっちゃ居心地悪い」
「奇遇だね、僕もだよ」
 もちろん僕ら(僕とカズタカ)はこんなところに慣れているわけもなく、ちょっとビビり気味。
その廃屋の中にある広めの空間に僕とカズタカ、木本、そして桂木とクマ男がいる。
他のクマ男グループの面々は居合わせてはおらず、この部屋にはいないものの、建物内をうろうろしているようだった。
「で、こんなところまで俺らを連れてきて何がしたい」
 そう言葉を発したのはいつでも戦えるようにと意気込んでいる桂木だ。
あの後ノコノコとこんな敵のアジトまでやってきたのだ。
桂木は「ふざけた真似しやがったら全てぶち壊してやる」そうだ。
「なに、あんなとこじゃ学園に話が筒抜けってだけだ!」
「学園に聞かれちゃいけねぇってことか?」
「ワシにも、お前さんにとっても、な!」
 なんでもいいけど相変わらずこいつの声うるさいな。
聞かれないように、ってこんなとこ来たみたいだけど、お前の声量でばれちゃうんじゃないの。

「というか僕ら関係なくない?」
「だよね・・・・しりとりでもやってる?」
「・・・・おい、俺も入れろ」
「あ、木本もやる?」
「じゃあ木本の”と”からね」
「トイプードル」
「”る”・・・・」

「律正に何故お前みたいな問題児が集まるかって話、考えたことないか!」
「別に・・・・俺は学校なんてどうでもよかったからな」
 どっかから持ってきたのか、汚れてはいるものの、ちょっと良いイスにどかりとクマ男が座る。
「ほら座れ」と促され、桂木も傍にあったパイプイスに腰をかける。
「あそこは娯楽施設なんだよ!」
「娯楽だぁ?」
桂木は思いっきり眉をひそめた。

 金持ち専用の娯楽施設。
学校というのは名目上。
本来の機能は、世界各国から集められた富豪どもVIP専用の実践鑑賞施設。
校内の生徒と他区の生徒との争いを生で、やらせなしで見たいと言う変態共用の空間。
勿論、その物好き共に被害が行かないように、学校を守る生徒の能力は高い。
『トリガーハッピー』然り、『サイキック』然り。
 日時すらも学校サイドから指定される。

「じゃあてめぇらが今日攻めてきたのは・・・・」
「ああ、「やれ」と言われたからだ」
 くるってやがる。
桂木は床に唾を吐き、イスを蹴り飛ばす。
「一年前の今」
 その言葉に桂木の動きが止まる。
「・・・・は?」
「『榊 恋を殺せ』と言われたからワシらは動いた」
「・・・・一体何のことだよ・・・・『言われた』だと?」
 桂木の視線がぶれる。
焦点が狂う。
「律正がお前らに『言・・・・った』?」
視界が暗転する。
「ああ」

 桂木はすっくと立ち上がり、ふらりと部屋から出ようとした。
当然のことながらクマ男は声をかける。
「どこへ行くつもりだ」
桂木も一応足を止める。
「ああ、まぁ、んん」
腕を大きく上げ、つま先立ちで背伸びした。
「弔いに学園潰しでもすっかなってね」
「ワシの言葉を信じると?」
「まぁ嘘だったとしても俺に害はねーしな」
くるっと一回転、再び顔を部屋へと向けた。
「元々好き好んであんな場所にいたんじゃねえし、タヌキ爺の顔が歪むのも面白い」
なんとなくだが、タヌキ爺=校長なんだろうなぁと分かった。
「だったらなおさらだ。もう少し話を聞いていけ」
「んだよかったりい」
 それでもそこに立ち止まる。
話を聞く気はあるようだった。
「ワシらと学園のつながりを話していなかったろう」

 最初は純粋なゴロツキ同士の縄張り争いだった。
律正学園が立っていた中央は、周りを睨むのに最適であったからだ。
複数のグループが躍起になって侵攻を繰り返した。
 だが学園はその『攻められる』という点に目をつけた。
即効で変態どもを集め、お前らのような戦力を仕入れて、ワシらを見事追い返した。
そのショーは目論見通り大盛況。
幾多もの大金が学園へと流れ込んだ。
 学園はこれに味をしめた。
数回のやり取りを交わすうちに、こちらに話を持ちかけてきた。
ショーの日時を指定してきたのだ。
 そんな言葉に簡単に頷く訳がない。
やつらは金を用意してきた。
元はただのチンピラが集まった集団。
資金といえば、そこらの一般人から巻き上げたちゃちな小金のみ。
 簡単に懐柔された。
それから現在に至るまで、ひたすら金に釣られ、仲間を犠牲にして言うことを聞いてきた。
 そんなある年だ。
学園はとある化け物を飼うことに成功した。

 ”皆殺し”。
『サイアク』だ。
関われば死滅。
触れれば壊滅。
視すれば崩壊。
当たれば全壊。
狙えば瓦解。

 そんなやつにワシらがどうできよう。
あいつ一人に、グループらはなすすべもなく全滅させられた。
ねじ伏せられ、叩き潰され、壊し崩された。
 目が覚めたやつらが出てき始めた。
こんな取引は無しだ、と。
今まで金の為に奴隷のように言うことを聞いてきたが、割に合わない、と。
 同様に、学園サイドでも問題が起き始めた。
最初は、圧倒的な戦力差、絶望的な『サイアク』の戦闘能力に歓声が上がった。
が、あまりに異常すぎた。
次第に顧客達は飽きだしたのだ。
「一方的すぎてリアリティがない。こんなのはただの芝居だ」と。
 学園は手を打たざるをえなかった。
すなわち「チンピラに攻撃を続けさせ、顧客を保つための策」を。
簡単な話、『サイアク』の始末だった。

「そこから後は知っての通りだ」
「・・・・」
「んな怖い顔するなよ!」
 桂木がものすごい形相で睨んでいた。
「アンタの話に付き合ってたらまともでいられそうにねえ、俺は行くぞ」
「ワシは『サイアク』退治には反対だった」

 金の為、そう割り切る連中だって好ましいとは言えなかった。
だが何をするにしても金は付きまとう。
仕方ない。
黙認せざるを得なかった。
 だが、そんなワシでもだ。
手下の命を粗末に扱ったりなどはしなかった。
人一人の命は、そいつ自身のもんだ。
それを「客が集まらないから切り捨てる」?
そんなことを許せるはずがなかろう。
 何が客だ。
何が見世物だ。
何が大金だ。
ふざけるのも大概にしろ。

「最初の質問に答えよう」
 こんなところまで連れてきて何がしたい。
クマ男の要望はただ一つ。

「一緒に律正潰そうや」


てすてす
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    ---最新---

    オオスミ(自宅兵士) スカート履いててよかった。



    ---過去---

    オオスミ(自宅兵士) かわいいかかわいくないかは問題じゃないんだよ。問題はパンモロできるかどうかなんだ。



    ファイム 今からヤるんだぁぁぁぁぁ!



    ことみ
    男の娘もいいね!



    暇人
    俺男の娘だから今女装してるんだ。



    ニタロ
    SRよりスナのほうが使い易い。



    くれない
    オレはファイムと精液が同じなんだ



    くれない
    ペドフィリアってかっこいいよね



    ざんちゅー
    水色パンツうひゃひゃひゃひゃwww



    カズタカ01
    痩せてるオレは可愛いんだ!



    くれない
    そのふとももがいけないんだ!そのふとももがオレを狂わすんだ!



    くれない
    パンツはいてるのは問題だろ。



    カズタカ01
    お前幻覚を聞いているんだよ。



    ファイム
    なんで暇人のカーチャンそんな素敵な声なんだ。



    ざんちゅー
    勘違いしないでほしい。俺がエロゲをやるのは愛がほしいからなんだ。



    ファイム
    最近、男の子がいいと思うんだ。



    オオスミ(自宅兵士)
    アヘ顔とか・・・
    アリだろ



    ファイム
    え、俺、童貞じゃないんだ。ごめんね。



    オオスミ(自宅兵士)
    ちょっともう少しで[同級生♂]が攻略できそうなんですよ。



    暇人
    今日から俺はアイドルだ!



    暇人
    2次元に性別の壁なんて関係ない!

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